売掛金の回収には、いくつもの手段があります。内容証明郵便、仮差押え、訴訟、強制執行など。さらに、これらの中にも色々な種類があります。
同じ債権でも、どの手段を、どの段階で使うかによって、戻ってくる額が変わります。この記事では、それぞれの手段の概要と、選び方の順序を示します。
回収は、手段をひとつ選ぶ話ではありません。相手方が支払わない理由を見極めたうえで、使う手段と、その順序を決めます。
回収の全体像
手段の話に入る前に、全体の流れを押さえておきます。回収は、おおまかに次の5つの段階に分かれます。
- 請求の根拠と資料の確認 何を、いくら、どういう根拠で請求できるのかを固める
- 相手方の状況の見極め 支払いを拒否している理由を見極める
- 通知と交渉 任意の支払を求める
- 保全と法的手続 財産を押さえ、債務名義を取る
- 強制執行 実際に取り立てる
ただし、必ずこの順に進むわけではありません。2の結果によっては、3を飛ばして4から入ることがあります。相手方に請求したことがきっかけで財産が動いてしまう場合には、先に押さえておかなければ意味がないためです。
請求の根拠と資料の確認
最初にやることは、請求の中身を固めることです。契約書、注文書と請書、見積書、納品書や検収の記録、請求書、そしてやり取りの記録。これらがそろっているほど、後の段階が速く進みます。
契約書がない、という理由であきらめる必要はありません。発注書、納品書、メールやチャットのやり取りなどから、契約の成立と内容を立証できる場合があります。
契約書がない場合にどう証明していくかについては、契約書がなくとも工事請負契約の立証はできるかもご参照ください。追加で行った作業の分をどう請求するかについては、追加工事代金請求のポイントもご参照ください。
あわせて、請求できる金額も検討します。一部だけ入金がある、相手方が相殺を主張している、追加分の扱いが決まっていない。こうした点があいまいなまま手続に進むと、途中で組み立て直すことになります。
相手方の状況の見極め
次に見るのは、相手方が支払いを拒否している理由です。理由によって、取るべき手段が変わります。
たとえば、法的な反論をしてくる場合があります。仕事がまだ完成していない、成果物に不備がある、こちらにも債権があるから相殺する、支払期日はまだ来ていない。こうした主張が出てきたときは、回収の手続に入る前に、その反論に理由があるかどうかを検討する必要があります。理由のある反論を放置したまま手続を進めると、費用と時間をかけたうえで、思ったとおりの結果にならないことがあります。
反論はしないが、支払わない、という場合もあります。資力はあるのに、後回しにされている。この場合は、通知や法的手続で状況が動くことが多くあります。こちらが本気であることが伝われば、支払われることがあります。
そもそも支払えない、という場合もあります。債務者の資力が乏しい場合などです。
ここに挙げたのは一例で、実際にはこれらが混ざった形で出てくることもあります。
通知と交渉
この段階の入口は、内容証明郵便による請求です。ただし、出せば支払われる、というものではありません。
よく見かけるのは、こちらが認識している事実関係を並べ、金員を支払えと高圧的に書いただけの通知です。形式としては請求になっていますが、これだけでは、相手方が支払おうと考える理由になりません。無視されることもあれば、感情的な反発を招いて、かえって話が固まってしまうこともあります。
通知を出すときに考えるべきなのは、どうすれば相手方が交渉の場に出てくるか、そして、どうすれば支払おうという動機が生まれるかです。相手方が何を理由に支払わないのか、支払った場合と支払わなかった場合とで相手方にどういう違いが生じるのか。そこを踏まえて書き分けます。
一方で、内容証明そのものに支払を強制する力はありません。相手方が無視すれば、それ以上は進みません。次の段階に進むための一手であって、それだけで完結する手段ではないと考えたほうが、判断を誤りにくくなります。
交渉の結果、分割払いの申し出を受けることがあります。受けるかどうかは、相手方の資力と、待つことで生じるリスクを見比べての判断です。受ける場合は、残額の確認、支払期日、遅れたときの扱いを書面にしておきます。ここを口約束で済ませると、また同じところに戻ります。
財産の保全という選択
請求したことをきっかけに、相手方が財産を処分・隠匿することがあります。これを防ぐ手段が仮差押えです。預金、不動産などを対象に、訴訟の前に処分を止めておく手続です。これにより、勝訴判決等を得た後に、仮に差し押さえている財産から回収を図ることができます。
仮差押えを行うには、裁判所に担保を納める必要があります。担保の額は、請求額や対象財産の種類、裁判所の判断によって異なります。相応の金額になることが多いため、手続に入る前に見込額を確認しておく必要があります。なお、担保として納めたお金は、事件が終了すれば原則として返還されます。
法的手続と強制執行
任意の支払が得られない場合、判決などの債務名義を取る段階に進みます。基本的には訴訟提起を行い、勝訴判決を得られるよう立証活動をしていくことになります。裁判の途中で、裁判所から和解を勧められるケースも多く、内容がまとまれば和解することもあります。
その上で、判決まで進み、勝訴できたとしても、それだけでお金が入ってくるわけではありません。相手方が支払わなければ、強制執行が必要です。預金や売掛金の差押え、不動産の競売など、対象によって手続が変わります。相手方の財産が分からない場合には、財産開示手続や、第三者から情報を取得する手続などがあります。
それぞれの手続の内容と、KBM法律事務所での取扱いについては、債権回収もご参照ください。工事代金の未払いについては、建築もご参照ください。
費用倒れの見極めと、相談のタイミング
ここまで書いてきた手続には、いずれも費用と時間がかかります。回収の見込みが乏しい相手方に費用をかけて進めても、結果として持ち出しになります。KBM法律事務所では、ご相談の段階で、回収の見込みと、そのためにかかる費用の両方をお示しします。「この事案は、手続を進めても費用に見合わないと思われます」と申し上げることもあります。
ご相談は、早いほど選べる手段が増えます。目安として、次のようなことがあれば、その時点でご相談ください。
- 支払期日を過ぎても、入金がない
- 「もう少し待ってほしい」と言われ、期日が先送りになっている
- 担当者と連絡が取りにくくなった
- 納品や施工の内容について、後から不満や指摘が出てきた
- 相手方の資金繰りが苦しいという話が耳に入った
KBM法律事務所にご依頼いただく場合
KBM法律事務所は、建築をはじめとする紛争を数多く取り扱っています。工事代金の未払い、追加工事の精算、取引先からの未収金。争いになった事案を最後まで担当しているからこそ、その事案でどの手段が現実的かを、早い段階で見極められます。
建設業のご相談では、現場で使われる言葉でお話しできます。元請と下請の関係、施工の段取り、見積りや出来高の考え方。設計や施工の細部まで踏み込めるわけではありませんが、前提のすり合わせに時間を使わずに、本題から入れます。
そして、回収したあとの手当てまでご相談いただけます。未収が生じる原因が、契約書の書き方や取引を始めるときの確認にあることは少なくありません。回収の手続と並行して見直しておくと、同じことが繰り返されにくくなります。
費用の基準は、料金・相談の流れにまとめています。まずはお気軽にお問い合わせください。
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本記事は一般的な情報を提供するものであり、個別の事案についての法的助言ではありません。具体的なご事情については、お問い合わせよりご相談ください。

