工事は終わった。しかし契約書は交わしていない。相手は支払いに応じない。
この状態でご相談に来られる方は少なくありません。そして多くの方が、「契約書がないから、もう請求できないのではないか」と考えています。
契約書がないことだけを理由に、工事代金を請求できなくなるわけではありません。
請負契約は、書面がなくても成立します
民法632条は、請負について、当事者の一方が仕事を完成することを約し、相手方がその結果に対して報酬を支払うことを約することによって効力を生ずると定めています。
注文者と請負人の合意があれば、契約書を巻いていなくとも、請負契約は成立します。
契約書の代わりになりうる資料は何か
契約書という一つの書面がなくても、合意の内容は、手元に残っている資料の積み重ねで示すことができる場合があります。
- 見積書、注文書、注文請書
- 打合せの記録、議事録
- メールやチャット(LINE、Chatworkなど)のやり取り
- 図面と、その変更履歴
- 作業日報、工程表
- 現場写真(着工前・施工中・完成後)
- 請求書と、それに対する相手方の反応
- 代金の一部入金の履歴
いずれも、単体では決め手にならないように見えるものばかりですが、これらは組み合わせることで意味を持つ場合があります。
集めた資料を、どう組み立てるか
資料が手元にあることと、それが立証に使えることは、同じではありません。
- 見積書・注文書
- メール、チャット
- 図面、作業日報
- 現場写真
- 一部入金の記録
- Aという事実
- Bという事実
- Cという事実
請負契約の成立が
認められる場合がある
資料の記載内容や体裁等によって、読み取れる事実は異なります。どの資料がどの事実を支え、その事実が契約の成立をどの程度推認させるか。この評価をどう組み立てるかが、結論を左右します。
一枚の見積書があるときに、その記載内容からどのような事実が読み取れるか、その事実は契約の成立をどの程度推認させるか。これらは、資料を見ただけで直ちに判断できるものではありません。同種の事案で裁判所がどのような事実を重視してきたか、どのような組み合わせであれば足りると判断されてきたか。裁判例と実務経験を踏まえた検討が必要になります。
それぞれの資料を何の事実の証拠として位置づけ、どう積み上げるか、この証拠評価を適切に行うことが重要です。ご自身では「こんなものは証拠にならない」と考えていた資料が決め手になることもあれば、決定的だと思っていた資料が単独ではほとんど働かないこともあります。
この見極めこそ、この分野を扱う弁護士にお尋ねいただく意味のある部分です。どの証拠を提出して、どの証拠を提出しないのか、提出する証拠の使い方、手持ち証拠を踏まえた適切な主張、これらが最終的な結果を大きく左右します。
動き出しが早いほど、資料は揃います
メールやチャットは、端末の入れ替えや担当者の退職等で失われるリスクがあります。現場の写真は、工事が進んでしまえば撮り直せません。紙の資料は何かの拍子で紛失・消滅してしまう可能性もあります。
「契約書がないから難しいだろう」と考えて時間を置くほど、集められたはずの資料が失われていきます。まだ手元にあるうちに整理を始めることが、そのまま回収の可能性につながります。
KBM法律事務所の対応
当事務所は、工事請負代金の回収を重点的に取り扱っています。契約書がない案件でも、お手元の資料を拝見したうえで、何がどの事実を裏づけ、何が足りないのかを整理し、請求の見通しをお示しします。
資料が揃っていない段階でも構いません。何が証拠になり得るのかをご説明することから始められます。
本記事は一般的な情報を提供するものであり、個別の事案についての法的助言ではありません。具体的なご事情については、お問い合わせよりご相談ください。

